ヨウ素とは❓

ヨウ素とは、人間にとって必要不可欠なミネラルのひとつで、ヨードとも呼ばれます。人間の体内には甲状腺に多く存在し、約10~20 mg存在します。甲状腺は、のどの辺りにある指先ほどの大きさの器官です。甲状腺は、代謝の維持に必要な様々なホルモンを分泌する器官で、ヨウ素は甲状腺から分泌されるホルモンの主要な構成成分となり働いています。

ヨウ素には殺菌作用もあります。昨今のコロナ禍もあり「ポピドンヨード」が注目されたことは記憶に新しいでしょう。うがい薬としての利用や、手術前に使用される消毒液にはヨウ素が入っています。ポピドンヨードは、ヨウ素をポピドンに結合させた水溶液です。ヨウ素と水が反応して、細菌やウィルスの表面の膜タンパクに働き殺菌・消毒をします。NASAもポピドンヨードを使い未知の世界の細菌対策をしたり、船にかけて洗浄しています。またヨウ素は偏光フィルム、造影剤、グラファイトなどにも活用されています。

意外にもヨウ素は日本が誇る輸出をしている天然鉱物資源です。特に千葉県房総沖は産出エリアとして有名です。世界一の産出国は南米のチリで、日本は世界第2位となっています。

 
消毒液としてのヨウ素はあまりに刺激性が強く外用のみに使うもので、飲用することはできません。ヨードチンキは皆さんも「赤チン」として馴染みがあるでしょう。

ヨウ素は本来、黒紫色で光沢のある金属の結晶です。ヨウ素の結晶が溶けると液体となり、その液体は赤褐色をしています。また、結晶が気体になると紫色になります。ヨウ素はアルコールなどの有機溶媒やヨウ化カリウム水溶液によく溶け、酸素とは反応しません。デンプンと反応すると、深い青紫色を示します。

ヨウ素は、ナポレオン戦争(1803年~1815年)の時に海藻から火薬を製造している時に偶然発見されたミネラルです。1811年、フランスの硝石業者クールトアによって、海藻の中からヨウ素が発見されました。硝石は火薬の原料となる鉱物で、当時は海藻を焼いた灰から生産されていました。クールトアは、海藻を焼いた灰を抽出した液に酸を加えると刺激臭がある気体が発生し、それを冷やすと黒紫色の結晶ができることを見出しました。
1813年には、フランスの化学者ゲイ・リュサックによって、この物質が新しい元素であることが発見されました。英語ではヨウ素のことを「iodine」といいます。これには、ヨウ素を瓶に入れておくと紫色の気体が立ち込めることから、ラテン語ですみれ色という意味の「ioeides」から命名されたという説や、ギリシア語で紫色という意味の「iodes」から命名されたという2つの説があります。
日本語では、ドイツ語名「Jod (ヨート)」の発音からヨードと呼ばれるようになりました。漢字では「沃素」または「沃度」と書きます。元素名や栄養素として使う場合は、ヨウ素という呼び方が一般的です。
栄養素としては、フランスの化学者ブサンゴーが、甲状腺腫に対する有効成分がヨウ素であることを発見し、1825年からはヨウ素が甲状腺の腫れに対する治療に使われるようになりました。

科学技術の進化とともにヨウ素は様々な使われ方が出てきました。下記の図はヨウ素の汎用性を示したものです。

ユニークかつ有益なテーマとしてあげられるものとして、海洋性ヨウ素化合物より新薬開発があります。例えば沖縄の軟体サンゴからは白血病細胞増殖抑制効果があるヨードブロンが単離されました。パルミラ環礁のホヤからは、糖尿病の原因でもあるアルドース還元酵素の阻害活性があるルキアノールーBが見つかりました。このように様々な病気治療への新薬が自然由来で開発が可能になってきています。