NACおよびグルタチオンの限界と問題点(重金属解毒における評価)
1. はじめに
NAC(N-アセチルシステイン)およびグルタチオンは、抗酸化作用や肝機能保護作用で広く知られており、重金属デトックスの補助として使用されることがあります。しかし、特に水銀(Hg)の除去においては、その効果には限界があります。本資料では、これら2つの化合物の問題点を科学的根拠に基づき整理します。
2. NACの特性と問題点
・キレート作用は非常に弱く、水銀イオン(Hg²⁺)との結合親和性が低い。
・単独での使用では、体内の水銀除去にほとんど寄与しない。
・グルタチオンの前駆体ではあるが、抗酸化作用が主目的であり、排泄促進作用は限定的。
・血液脳関門(BBB)を通過できないため、脳内の水銀除去には寄与しない。
・再分布リスク:一部の重金属を動かすが、完全な排出には至らず、かえって他組織への再分布を起こす可能性がある。
3. グルタチオンの特性と問題点
・水銀と結合できるが、結合力は中程度であり不安定な錯体となる。
・再分布のリスクがあり、特に脳など中枢神経系への移行が懸念される。
・血液脳関門を通過しないため、脳内水銀の排出には効果がない。
・外因性グルタチオン(経口、点滴)は体内利用率が低く、分解または再利用されてしまう。
4. 科学的根拠(主要な文献)
・Rooney JP. The role of thiols, dithiols, nutritional factors and interacting ligands in the toxicology of mercury. Toxicology. 2007. PMID: 17560442
・Clarkson TW, Magos L. The toxicology of mercury and its chemical compounds. Crit Rev Toxicol. 2006. PMID: 17391529
5. まとめ:代替手段との比較
NACおよびグルタチオンは、重金属排出を目的とした「主要なキレート剤」にはなり得ません。代替手段としては、チオ硫酸ナトリウム、DMPS、DMSAなどがあり、これらは重金属とより強固な錯体を形成し、腎排泄性が高く、再分布のリスクも低減されます。