チオ硫酸ナトリウムと腎蓄積水銀の排出機序
■概要
チオ硫酸ナトリウム(Na₂S₂O₃)は、無機水銀(Hg²⁺)に対して錯体を形成し、腎臓への蓄積を抑制・排出を促進する働きがある。
■ 1. 水銀との錯形成
・チオ硫酸ナトリウムはスルフヒドリル(-S–S–)構造を有し、Hg²⁺と強く結合して錯体(例: Hg(S₂O₃)²⁻)を形成する。
・この錯体は水溶性が高く、腎臓からの排出が促進される。
■ 2. 酸化ストレスの緩和
・水銀は活性酸素種(ROS)を誘導し、腎細胞障害を引き起こす。
・チオ硫酸は抗酸化作用を持ち、ミトコンドリア障害を軽減する。
■ 3. メタロチオネインの調節作用
・チオ硫酸ナトリウムはメタロチオネイン(MT)の発現を誘導する可能性がある。
・MTはHg²⁺と結合し、細胞内毒性を低減する。
■臨床応用の可能性
・使用目的: 水銀、鉛、ヒ素など重金属の解毒
・投与経路: 静注(経口は吸収不安定)
・併用例: NAC、DMPS、DMSA との併用あり得るが腎機能に留意
・注意点: 高用量では低カルシウム血症やアシドーシスの可能性あり
■主な参考文献
- Zalups RK. “Molecular interactions with mercury in the kidney.” Pharmacol Rev. 2000.
- Matos RE et al. “Sodium thiosulfate increases the urinary excretion of mercury and mitigates nephrotoxicity in rats.” J Appl Toxicol. 2017.
- Swarup D, Patra RC et al. “Amelioration of chronic lead toxicity by sodium thiosulfate in goats.” Toxicol Lett. 2007.